†君、男~Memory.. limit of grief~



「朱音?」


放課後、中庭で一人
たたずむ朱音に呼びかける恵。
無表情のまま朱音は恵の方に体を向けた。


そしてゆっくり話し出す。


「レインは…私達と親友だよね?」


「え?」


「ずっと思ってた事があるの…。
 私と結菜はレインと一緒にいてきた。
 けど、それはただ一緒に
 いるだけじゃないのかって…。
 レインが悩んでる時私、
 何もレインに出来ないんだもん」


「      」


朱音の目から一粒の
涙か零れ落ちた。


「レイン、朱音?」


「結菜―――…」


たまたま通りかかった結菜。
二人の様子が変だと思い話しかけたのだ。
その予感は的中していた。


「レインの悩み、安井さんは
 分かってるのに私達は知らないことが
 すごい寂しかった…!」


「朱音それは違う…!」


恵が朱音に近づこうとすると
朱音はそれを撥ね退ける。


「今は何も話せない…。
 何に悩んで何に苦しんでるか
 レインは何も言ってくれないから、
 今は私…レインと話せないよ――…」



「       」


霜月を目の前にして、
私はその言葉が


枯れていく花びらと共に
流れていくのが見えた。


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