†君、男~Memory.. limit of grief~
「北瀬…さん?」


ピースサインを向け、
恵の横に座る。


「せっかくお母さんと仲直り出来たのに
 何でそんな暗いの?」


「…知ってたんだね、何もかも。
 だから優兄に近づいたの?」


「うん。貴方が佐伯先生に近づきば
 本当の事を知って
 貴方が傷つくと思ったからね…。
 けど逆効果だったみたい」


笑って足をブランコのように
上下に揺らす麻耶。
恵は深いため息をついた。


「私の事、いつから知ってたの?」


「入学して間もない頃。
 貴方を始めてみて、もしかしたらって思ったの。
 レインさんとよく似てたから。
 調べていくうちにそれが確信して、
 精一さんにも伝えた。
 貴方がこの学校にいるってね」


「そう…」


俯く恵とは逆に麻耶は空を見上げる。


「貴方の事知ってくうちに
 どれだけ苦しんでたかが分かっていって…
 私自身辛かった。 
 こんなにも近くに毎日毎日、
 悩んでる人がいるんだもん…」


「ずっと…ね」


鼻で笑う恵。
麻耶もつられて笑う。
大きく手を伸ばして


「ずっと好きだったんでしょ?
 佐伯先生の事」と口にした。
 苦笑いを浮かべながら恵は答える。


「叶わない恋と分かっててね―…」


「そんなのまだ分かんないじゃん。
 最後の最後まで。
 ずーっと想い続けた気持ちは
 いつか必ず届く時が来るよ。
 佐伯先生の近くにいたら
 貴方がどれほど好きかよく分かったしね」


「…まさか本気で優兄の事
 好きだったんじゃないだろうな?」


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