†君、男~Memory.. limit of grief~
「あっレイン!
やっと見つけた」
暗闇の中から現れたのは恵だった。
朱音達は慌てて駆け寄り
何処行ってたの?と尋ねる。
しかし返事が返ってこない。
「レイン…?」
恵は俯いたまま何も言わない。
何度か尋ねる朱音だが、
結菜が途中で止める。
今はそっとしといた方が良いと
判断したのだろう。
その日、恵が体育館に
現れることはなかった。
月曜日。
土曜日に体育祭が行われたので
月曜日は休みだった。
恵は9時過ぎに起きて
着替えた後外に出かける。
外は薄暗かった。
近所を歩き、
着いた場所はこの辺でも
珍しく景色が美しく見える場所。
薄暗いこの日は風が冷たかった。
「…」
…優兄
貴方は今でも私の声、
聞こえませんか…?
「レイン?」
「 優兄?
どうしてここに」
「今日は自由なんでね。
気分転換に」
「そう…」
沈黙が続く。
気まずくなったのか、
恵は帰ろうとする。
「もう探すな」
その言葉で
ピタッと止まった。