†君、男~Memory.. limit of grief~

「…一般の人と結婚したんだ」


レインは頷き窓の方へと歩いていく。


「その人、柳本家の資産が目当てだった。
 その当時からおじい様は有名で、
 どれほどお金を持っていたか分かっていたんでしょうね。
 資産が目当てだと分かった後すぐに別れて…
 でも、私を生んだ後に病気で亡くなったの。
 だから…私が結婚する時も
 一般の人が許せなかったのよ」


「…」


「実を言うと…おじい様
 もう長くないの…。
 だから、せめて1回だけでも
 会ってもらいたいの…」


全ての話を聞いた恵は
パーティーには行くから、とだ言って帰っていく。


家に着いた恵は早速
レインから借りたCDを流した。



『部屋の隅に映る影
 水に浮かぶ影
 どれもみんな掴めない

 閉ざされた扉の奥にひっそりと
 君が覗き込んだ後が残る
 夢を追いかけて苦しくて
 君に手を伸ばして涙

 覚めないで今宵も満月だから
 掴めそうな気がしたの この月は
 そこにいる貴方を手にしたい


 君の傍で映る影
 街灯から出た影
 どれもみんな掴めない

 私が見えるあの場所へと
 誰かが閉めた蓋を残す
 夢を見て朝日が昇り
 窓を開ければ私の影

 見上げないで空も青いから
 静寂が狂いそう この匂いから
 そこにいた貴方はもういない


 覚めないで今宵も満月だから
 掴めそうな気がしたの この月は
 静寂が狂いそう この匂いから
 そこにいた貴方はもういない


 いつかもし会えたら
 あの夜空の向こう側で
 ずっと見守っているよ 会い来ると

 今度こそ伝えるから』


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