†君、男~Memory.. limit of grief~



「今帰るのか?」


「うん」


生徒会室を出た恵は途中
優介とすれ違う。
恵とは逆に優介は
生徒会室に向かっていた。


「あー…あのさ」


「?」


どこか落ち着きのない様子。
優介は持っていたプリントの中から
パンフレットのようなものを恵に渡した。


「俺の友達が経営してる店なんだけど、
 24日の日に来ないかって言われて…
 もしその日空いてたらレイン、
 一緒に行かないか?」


「えっ?私が行っていいの?」


恵は優介に渡された
パンフレットに目を通す。
見るからに高級な店を漂わす
雰囲気、そして料理。


恵は疑うように優介を見た。


「いやっ…他に行く人いないしさ、
 レインなら大丈夫かなーって」


「何だ…人を余り物みたいに見て」


責め立てるように言う恵。
なおも言い続ける。


「優兄に物扱いされる覚えはないぞ。
 私なんかと行かなくても
 別に他にいるだろう?」


「いつ物扱いした…。
 俺はただレインと行きたかっただけで――…!」


「え…?」


しまった、と言うような表情をして
口を閉じる優介。
恵はきょとんとした丸い目でこちらを見る。


もう後には引けないようだ。




「クリスマスかー…」


帰り道。一人燐は呟く。


「私も好きな人はいるんだけどね…」


苦笑いを浮かべた後ため息をつく。
今こうして一人で帰っていることも
むなしく思い始めていた。


「クリスマスか…」


燐は再び同じ言葉を言い、
家へと帰っていった。



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