†君、男~Memory.. limit of grief~
「すごい美味しかった。
ありがと。…ところで何処に向ってるの?
駅はあっちのはずじゃ…」
店を出てから二人は
駅とは違う方向に向って歩いていた。
ただただ優介が行く方向に
恵はついていく。
すると暗い道から刹那にして
幻想の世界に入ったような…
ライトアップされた道へとなった。
「この辺では有名な
イルミネーションらしいんだ。
“星のストリート”って名前もついて」
どこまで続くのか分からない道。
青と白をベースにし、
黄色やオレンジといった光が
交互に連なっていた。
あまりの美しさに恵は立ちすくんでしまう。
するともう一つ、空から
光が落ちてきた。
「雪だ…」と優介は呟く。
恵もその雪を見て呟いた。
「たまに降る雪って、
すごく綺麗に見える。
こんな場所でなら余計…」
「…じゃぁさ、
たまにはこういうのもいいんじゃない?」
「 」
優介は微笑む。
恵の手を掴みながら。
「えっ…!」
状況が上手くつかめていない恵は慌てる。
優介はその手を引っ張った。
「ほら、早く行くぞ」
「ちょっ…優兄!?」
外は雪が降るほど寒いのに、
何故か私の手を掴む
貴方の手は温かかった。
こんなこと…
初めてだ――――
このリングのネックレスが
今…唯一私と貴方が繋がる
鍵のような気がする―――…