†君、男~Memory.. limit of grief~

今日の空は快晴だ。
冷たい空気ではあるが、
屋上は暖かかった。


「で?話って何?」


早速優介は訊く。
恵は息を呑み答えた。


「クリスマスの日、宮原家のパーティーに行って…
 柳本充一郎さんに会った」


「え?」


「…私の事憎んでないって
 言ってた…」


「そっか…良かったな」


優介は安心して微笑む。
しかし恵は首を振った。


「死ぬ間際、私にこう言った。
 私が求めてるものは光じゃない…
 何を求めてるのかは誰かが教えてくれるって。
 けどその人は闇を持ってると」


「―――…」


「私、将来の夢とか何も決まってない。
 先生に聞かれても何も答えれない…。
 けど、何か償いたいの…私のせいで
 夢を失ったお母さんに」


「お母さんはレインのせいなんて
 思ってないと思うけど?」


恵は俯く。
手を強く握り締めた。


「お母さんの文集に
 将来の夢は“薬剤師”って書いてあった。
 その事聞いたら…自分の夢を
 おじい様には正直に言えないって言ってて…」


「だから代わりに自分が?」


地面に涙が弾く。
次に恵が話す時声は震えていた。


「探したいの…私が求めてるもの」


優介はそっと恵の頭を撫でる。
顔を覗き込んだ。


「いつか見つかる、きっとだ」


「     」



< 289 / 482 >

この作品をシェア

pagetop