†君、男~Memory.. limit of grief~


「あれ。またレインがいない」


お昼休み。ご飯を食べようと
思った矢先、恵の姿は教室になかった。
授業が終わって数秒の出来事だ。


「誰かレイン知らない?」


「あーさっきお弁当持って
 外行くの見たけど」


「ホント?」朱音と結菜は
急いで恵を探しに向かった。





その頃恵はいつものように
中庭のベンチに座っていた。
しかし、今日はいつもと違う。
絵を描いていることだ。


複数の鉛筆を横に置き、
A4サイズの画用紙に
手早く鉛筆を滑らせる。


そんな時後ろからそれを見ていた
一人の女子生徒が声をかけてきた。


「蒼井…恵さんですよね?」


「…私のこと知ってるの?」


「うん。クールで綺麗って有名だからね。
 あっうちは3組の板谷 万里。よろしく」


隣いいかな?と言って
万里は恵の横に座る。


「絵描くの好き?
 うちも描いてるんだ。
 でもイラストとかだけどね」


「うん。絵描いてる時が落ち着くから。
 そういうの貴方にはある?」


「あっあるね。ついつい
 時間忘れちゃうし」


万里は大きく背を伸ばす。
そして欠伸をした。


「晴れた日は眠くなるよ」


「…そうだな」


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