†君、男~Memory.. limit of grief~






「レイン」


「…都宮先輩?」


卒業式を1週間前に控えた3年生。
その中で学校に来るのはわずか2日程度。
卒業式の練習ぐらいであった。


三送会の準備で慌しかった恵は
やっと少しの時間が空き、
中庭で休んでいた。


ちょうど帰るところだった慎は
恵に声をかけ最近元気?と尋ねる。


「まぁ…それなりに」


どうも浮かない表情の恵。
慎はその様子をまじまじと見つめ
恵の横に座った。


「前俺達に自分の事話してくれただろ?
 あん時思ったんだけどさ…
 佐伯先生の事好きだよね?」


なんの前触れもなく唐突に訊く慎。
横向く恵に慎はケラケラと笑う。


「やっぱりなー。
 多分須藤も気づいてるよ。
 まっなんとなく前々から気づいてたけど」


恵は「叶わないけど」と言わんばかりに
小さく呟いた。


「先生の事何も知らないのに
 ずっと探し続けてる…。
 本当は怖いのに、求めてるものは何か
 知ろうとして…自分でも何してるか分からない」


「悩む事は絶対あるって。
 けどその答えはさ、案外簡単なとこに
 転がってるもんだって」


慎は恵の頭を撫でる。


「探し続けてるならかならず見つかる。
 その時は不幸なんて来ない。
 何かを必死になって見つけたとき幸せだろ?」


何で?何でこんなに苦しいの?
何で人の言葉ってこんなにも響いてくるの?


愛おしいから…
愛おしい人がいるから――



< 291 / 482 >

この作品をシェア

pagetop