†君、男~Memory.. limit of grief~


「まぁでもそこまで想われるなんて
 佐伯先生も罪だな」


何で?と恵が訊くものの
慎には笑って誤魔化す。


その後すぐに慎はバイバイと言って
帰っていった。
残った恵は背伸びをする。



目の前に転がってる答えの入った
箱を開けるのが怖くて、
まるでパンドラの箱のよう。


でもそれはずっとしまっている事が
出来ないから…
意を決したら開けないといけないのに――

 

「よっ、レイン」


「優兄」


貴方が笑顔でそう言うから、
私は戸惑うの。


貴方の何気ない笑顔が
私を苦しめてる。



けど―――…



「レイン」


こっちおいで、と言うかのように優介は手招きをする。
恵は立ち上がって優介の近くに行くと優介は上を指した。


「あっ…」


桜だ。もうすぐで花が咲きそうな桜。
その隙間から太陽の光が差し込み
地面へと当たっていた。


「この桜が咲く時には
 もうレインがこの学校にいるのも後わずかって事、
 言ってるみたいだな…」


「…!」


卒業。その2文字の言葉が浮かぶ。
恵は俯いてハハと笑った。


「もう3年になるんだ…。
 早すぎる」


「生徒会活動も3年の1学期まで。
 頑張れよ?」


「分かってる」


今の私にはそう言うことしか出来なくて…
生徒会を終えた後の私なんて
想像もつかない。


貴方との距離が、
もっと遠くになる気がするから。


今でも叶わないのに
もっと叶わなくなる


そんな気が…した―――



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