†君、男~Memory.. limit of grief~



「蒼井」


優介が“蒼井”と呼ぶのは
学校だから。
分かっていても恵にとっては
複雑な部分があった。


何?と返事をしながら
荷物を鞄に仕舞う。


「今日さ、俺が終わるまで
 待っててもらえないか?
 6時ぐらいには帰れるんだけど…」


「何で?」


「俺の親がお前んとこの親に
 渡してほしいって預かってるんだ。
 直接渡せって」


「ふーん…。
 じゃぁ生徒会室で待ってる」


素っ気無い返事の恵。
優介は首をかしげた。


いつもあんな感じか…と
軽く流すものの今の恵にとって
素っ気無い態度は心にある
モヤから出たものなのだ。


そんなことも知らず優介は
職員室に戻っていった。


その後姿を見て恵は
腕を組み深いため息をつく。


「…燐のやつ」


そう恵が呟くのには理由があった。
HRが終わった後恵は燐に
「今年は高校生活最後の年なんだから
先生に近づかなきゃ駄目だよ!」と
真剣な目つきで言ってきたのだ。


なるべく考えないようにしていた恵だが
やっぱり頭の中に残っていた。
それは帰る時まで…。




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