†君、男~Memory.. limit of grief~


「レインー!やっぱりここにいた」


大きく手を振り
こっちに向かってくるのは
朱音と結菜だった。


万里は立ち上がり
「そろそろ帰るね。また絵見せて」と言って
その場から立ち去っていった。
それと同時に二人が来る。


「今の子は?」


「3組の子。絵見にきたいだけど…」


「絵?…うわっレインそれ
 レインが描いたの!?」


二人は絵を覗き込む。
鉛筆だけでは描いたと思えない
綺麗さだったからだ。


「えっ…鉛筆だけでこれだけ描くって
 本間すごいんだけど」結菜が関心する。


「私とは比べ物にならないよ。
 そういえば家に絵を
 飾ってる部屋があるって言ってたよね?
 夏休み見に行ってもいい?」


「うん。いつでもいいよ」


「わーい。…ってお弁当食べる為に
 レイン探してたんだった」


紙袋からお弁当を出し、
朱音は広げ始める。
結菜も慌てて広げた。


「レイン?どうしたの、ボーっとして」


「…ごめん。先に食べてて」


恵は周りの物を片付けて
どこかに向かって走り去ってしまった。
レイン忙しいねーと呟きながら
二人は太陽の下でお弁当を食べる。




貴方は私の絵を見て、
こう言った。


『次見るときは、
 もっと上手くなってろよ』



…貴方はその日から
私のこと、嫌いになってた?



「優兄」


屋上へ行く道は、
誰もいない。




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