†君、男~Memory.. limit of grief~
そう…恵に飛びついたのは
義理の従兄弟、蒼井実也(みのや)だ。
優介も後ろで目を丸くする。
実也に近づく。
「実也?」と尋ねると
実也の方を「優介さん!?」と言って
指を指しながら感動していた。
「お久しぶりです」
「おっおぉ…。
どうしてこんなとこにいるんだ?お前」
「実はこの春から大学生になるんですよ。
で、学校が自分家から2時間半近くかかるんですね。
でもレインの家からなら30分ぐらいで行けて。
俺の行く大学、寮は2年生からじゃないと駄目なんですよ。
だから1年間ここでお世話になるんです」
「……は!?」
あまりの話の展開についていけない優介。
一方の恵はというと実也を見るなり嫌そうな顔をしていた。
今にも「帰って」と言いそうなぐらいだ。
「俺の親が大学の事レインのお母さんに行ったら
うちでよければどう?って言ってくれて」
「いらっしゃい実也君」
「あっこんにちはツカサさん」
礼儀の良い実也。
それは部活で鍛え上げられたものだろう。
しかし恵のとっては不愉快なものだった。
「すいません。
今日はやっぱり帰ります」
「あら、残念ね…。
またいつでもいらしてね?」
一礼して優介は車に乗り込む。
「じゃぁなレイン」と言って帰っていった。
「二人とも早く入りなさい」
玄関でツカサの声が響く。
実也は返事をして行こうとするが
恵はその場から動かない。
「レイン、入らねーの?」
「後で行く」
冷たい口調。
実也は頷くだけで何も言わなかった。
さっきとは打って変わって不適な笑みを浮かべ
家へと入っていった。
恵は歯を噛み締めながら
今ある状態に後悔していた。