†君、男~Memory.. limit of grief~
部屋に入ったきり出てこない恵。
何度ツカサが呼んでも
降りては来なかった。
仕方なく実也が恵の部屋の前に行き
ドアをノックする。
「入るぞ?」
そう言ってドアを開ける。
暗闇の中恵は窓の前で横になっていった。
「何?」
「さっきから呼んでんだけど。
何、寝てんだよ」
「ほっといて」
冷たく、きつい口調。
実也は笑った。
「相変わらずだな、その口調。
3年会ってなかったけど、
変わってなくて安心した」
「ならいいでしょ?出て行って」
またも冷たく言う恵。
さすがの実也もムッとなる。
「…まだ好きなんだ、
優介さんの事」
そう言うと恵は実也を睨んだ。
「それが何?」と言ってるかのように伝わってくる。
実也は続ける。
「何であんなやつ、今でも
そう想ってられるんだよ。
…レインを裏切ったあいつを」
その言葉に実也は恵の
逆鱗に触れてしまった。
恵は立ち上がって怒鳴る。
「ほっといて!!」
出て行け!と付け加え
実也を押し出す。
勢いよく扉を閉めた後
恵はずるずると壁にもたれながら
しゃがんでいった。
「お願いだから何も言わないで…!」
「…ごめん」