†君、男~Memory.. limit of grief~





「“soul/(ソウルスラッシュ)”です。
 良かったら名前だけでも
 覚えてください」


「…」


学校の帰り道、駅で
ストリートライブを見かけた恵。
立ち止まってその人達が歌う歌を
ただじっと立って聞いていた。


***



私は歌が嫌い。
歌う事なんてもってのほかだった。


ずっと歌う事を避けてきたのに、
…事の発端は1年生の時
朱音や結菜達と行ったカラオケからだ。


生徒会に入って文化祭の話し合いになり
燐が行った事も含む。


中学の時、たった一度だけ
燐の前で歌った事がある。
けどその時はまだ今のように
“友達”としてではなく、
ただの“同じ学校の人”という形だった。


私にとって歌は
悲しみを生むだけの道具にしかすぎない。


でも…その考えは文化祭を通して
人前で歌う事によってだんだん薄れてきていた。



嫌いなのに。歌なんて大嫌いなのに…。





< 309 / 482 >

この作品をシェア

pagetop