†君、男~Memory.. limit of grief~
「優兄」


扉を開けると同時に
強い風が突き抜ける。
重くなった扉を強く押し、
屋上に入った。


「…よくここにいるって
 分かったな」


「なんとなく。
 いいね…
 いつでも好きな時間に
 屋上にこれて」


「そうでもないけどな。
 レインは昔からこういう場所
 好きだったよな。
 俺が連れて行ったの覚えてるか?」


「確か私が小2の時だよね」


二人はその場に座る。
二人の距離は5mほどあった。


「雲と雲の隙間から出る太陽の光を見て
 お前は感動してた。冬の朝だ」


「忘れるわけがない。
 無理やり優兄に起こされ
 朝早くから寒い中外に出された」


ハハハと苦笑いする優介。
笑うな、と恵は少し怒った口調で言った。


「知っていたんだろ?
 私が朝の太陽好きなこと」


「あぁ。おばさんに聞いてたから。
 あそこまで感動するとは思ってなかったけど」



「なら…。
 夕日が嫌いな事も知ってるか?」


「……」


優介は口を閉じる。
恵は顔を上げ、空に向かって
片手を差し伸べる。


「それは今も変わらない。
 …ずっと嫌いなままだ」


立ち上がる優介。
帰るぞと言って扉に向かう。
恵は大声で言う。


「突き放したのが優兄なら、
 私もきっと同じことをしてる…!」


「     」


「優兄は5年前から
 何も変わってないって言ったよね?
 私が5年前に言った事も
 何一つ変わってない」


「レイン」


優介はそう呼ぶが
恵は話を続ける。

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