†君、男~Memory.. limit of grief~


もう今から8年前の話し。
優兄が引っ越したその日。


雨の中ただ立ちすくむ私の後ろから
ピアノの音が聞こえてきた。
そして、途中から声も入ってきた。


楽しそうに、幸せそうに…
そんな風に歌う事が憎くてしかたがなかった。


今まで好きだった歌が
その歌によって悲しみの連鎖を
呼び起こしたんだ。


歌はその時の感情によって
捕らえ方が変わる。
私の場合、一つ曲と感情が
重なり合った時、抜け出せなくなるんだ…。


悲しくて、辛くて、憎くて…


貴方の笑顔が
消えてくの―――…



本当は実也の言ってる事
分からなきゃいけないのに…
心がそうさせてくれない。


“何であんなやつ、今でも
 そう想ってられるんだよ”



見つけたの…見つけてしまったの、


重なり合ってしまった
恋歌を――――…


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