†君、男~Memory.. limit of grief~


「そういえば優兄って
 普段眼鏡かけてないよね」


「いまさら?」


5月5日GW真っ只中。
商店街をあるく二人は
ふとした瞬間、会話の中に
優介の眼鏡が出てきた。


「仕事と普段で分けたいから
 眼鏡はずしてるだけ」


「へー…まぁ優兄なら
 どっちでも似合ってるけど」


「(よく平気で言えるな
 そんな事…)」


懐疑心を抱く優介。
しかし恵はいたって普通だった。


「てか、もうすぐ4時だし
 そろそろ買い物でも行くか」


「…」


「レイン?」


腕時計を見て時刻を確認している中、
恵は別の方を向いて立ち止まっていた。
どうした?と尋ねると恵の視線の先には
ゲームセンターがある。
恵はそこに向かって歩いていった。


「家に、似たようなのがある。
 昔優兄に貰ったやつが」


UFOキャッチャーの前で立ち止まった恵。
豚のぬいぐるみを前にしてそう呟いた。


「欲しいの?」


「んー…でも私こういうの
 やったことないから、別にいい」


と言って振り返る恵。
一歩前に出たところで腕を優介に掴まれた。



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