†君、男~Memory.. limit of grief~
◇
「須藤、これ会計の書類。
先生に提出しといて」
燐は持っていた書類を差し出す。
「サンキュ」
朱鷺は燐が持っていた書類を受け取り
すぐ歩き出した。燐は慌てて呼び止める。
「あっ須藤…!」
「ん?」
「いや…あの、その――…」
朱鷺から目を逸らしもじもじしている。
やっと喋りだそうとした時
別の方から朱鷺を呼ぶ声が聞こえてきた。
「朱鷺ー!サッカーしよーぜ」
「おぅ、今行く。悪いな安井、
俺行くから」
「うん…」
言いたい事も言えず燐は
俯いてしまっていた。
朱鷺の背中を遠く離れた人に見えて、
胸が苦しかったからだろう。
「どうかされましたか?」
「レイン!?」
突然背後から現れた恵。
「えっとー…何でもない!」
逃げるように走り出す燐。
恵は腕を腰に当て呆れていた。
そしてまた背後から、今度は麻耶が現れた。
「恋する乙女は大変ですなー」
「…」