†君、男~Memory.. limit of grief~


「須藤一人?」


「んー?…そうだけど」


放課後、一人教室にいた朱鷺。
たまたま通った燐は朱鷺の元へと向かった。
朱鷺は窓側の席に座っていて
グラウンドを眺めていた。


「珍しいね、須藤がこんなとこいるなんて」


「…俺だって考え事ぐらいするけど」


「考え事してたの?」


「…」沈黙。


気まずくなるこの空気。
燐は朱鷺が座り隣の席に座った。
同じようにグラウンドを眺めて…。


「とっ突然の質問なんだけど、
 須藤ってどう言う人がタイプなの?」


燐の質問に物珍しそうな目で見る朱鷺。
そうだなー…と呟いた後
燐の方を向いて真剣な表情で答えた。


「勝ち気で、あんまり人に
 弱いとこ見せない人」


「      」


そんな人がタイプなんだ。


私がそれを聞いたのは
2年の1月だった。


クリスマスの日、学校から
2つ向こうの駅の商店街に行って…そこからだ。
私と須藤との間に距離が出来始めたのは。


嬉しかった幸せも、
須藤の好みのタイプを聞いたことで
ますます話しづらくなったよ…。



「…あ…ッ」


帰り道。いつの間にか目には
涙が溢れていた燐。
慌てて拭き取った。
それでも、自然と涙は出てきていた。


「…ッ」


何でだろう。
何で涙が出てくるの?


こんなにも好きだって事
気づかなかった…。


人を好きになるってこういう事…?



ねぇ、レイン――――



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