†君、男~Memory.. limit of grief~



「どうした燐。最近暗いぞ」


「…そうかな?」


体育祭間近となったこの日。
移動教室のさい恵は燐の顔色を見て言った。


「私、毎日のように泣いてる気がする」


「…辛いんだ」


「そうだね」


笑って「違う」なんて言葉いえない。
正直に「そうだ」って言う言葉の方が
気持ちがスッキリした。


一つ一つの言葉がこんなにも大切ってこと今になって分かった。
1秒でも喋れる時があったら、幸せなんだなって…。



「燐ちゃん!」


「万里?」


放課後、気分の乗らない燐は
生徒会の集まりまで中庭で時間を潰していた。


「最近燐ちゃん暗いけど大丈夫?」


「…恋って辛いね」


「須藤の事?」


「うん。クリスマス以来全然で…
 好みのタイプ聞いた後何かもう
 私どうしていいかわかなんなくなってきてさ」


万里は燐が須藤の事を好きだと言う事は
前々から知っていた。
本人が言ったのだ。情報収集が得意な万里は
朱鷺の事をいろいろ教えていた。アドバイスも。


「こんなとこで弱気になったら駄目だよ」


「でも…!須藤あれでもかなり人気あるし、
 私なんか全然駄目だからさ…
 すごい弱気になるの」


「人気あっても関係ないよ?
 どれだけその人を想ってるかが大事なんだから。
 燐ちゃんは入学したその日から
 …一番最初に須藤と話したんじゃないの?」


「…」


そうだよね。
私、誰よりも須藤を想ってるって
誰を相手にしても言える。


「ほら、今から須藤と話してこーい」


ドーンと背中を押す万里。
燐は少し戸惑いながらも
「ありがと」と微笑んで走っていった。




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