†君、男~Memory.. limit of grief~



「(須藤何処だろ…?
 何か今日日番とか言ってた気がする)」


うーんと立ち止まって考える燐。
ふと何処からか声が聞こえてきた。
燐はその声のする方に走っていく。


「あっ!」


須藤!と言いかけた矢先、
朱鷺とは別にもう一人女子が2人いた。
燐は隠れて会話を聞く。


「須藤先輩、これ今日家庭科で
 作った物なんですけど、よかった
 受け取ってください!」


恥ずかしそうに俯いて、
綺麗にラッピングされたクッキーを
女の子2人は渡していた。


「ありがと」


「      」


動かない。
体が、指一本動かないよ。


涙が溢れてくる…。


須藤に憧れる人、
須藤を好きな人。
そんな人いくらでもいる。


けれど、いざそういう光景を見ると―…



「安井?」


「!?」


放心状態になっていた燐は
朱鷺が目の前にいることも呼ばれてから気づく。


もう涙は粒も床に落ちていた。


「おい、大丈夫か?」


「…ッ大丈夫、だから」


朱鷺の顔も見ず走り出す燐。
朱鷺が何かを言っている事など
燐の耳には入ってこなかった…。



最悪だ、私。





大好きなのに―――…。





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