†君、男~Memory.. limit of grief~
◇
「あれ、燐ちゃんまだ来てないの?」
生徒会室に来た万里は
燐がいないことにすぐ気がついた。
朱鷺がいるからなお更。
「…探しに行ってくる」
ぶっきら棒に立ち上がり
生徒会室を出る恵。
重い空気が流れた。
「燐」
「レ…イン…ッ」
人通りがない廊下。そこは屋上に続く道だった。
うずくまって泣いていたのは燐。
恵を見るなり飛び掛る。
反動で後ろに下がった恵は
倒れないように燐を支え、「大丈夫か?」と
一言囁いた。
「逃げてきたの…須藤のとこから。
最悪だよ、私。何か須藤が他の人と
話してる姿が嫌で…!
すぐに涙が溢れてくるッ」
燐の頭を撫で、恵は力を抜いた。
「安心しろ。燐の恋は頑張れば叶うものだ。
泣いた分だけ好きになってる。
その気持ち、ちゃんと相手に伝えれば
すっきりするんじゃないのか?」
「…ッ」
「好きと言う感情でその人を拒む事はある。
普通に話す事はきっと前より
難しいと思う。けど、燐は大丈夫だ。
私なんかよりずっと可能性を持っている。
少しの努力でそれは変わる」
「 」
何度も何度も鼻を啜る燐。
喋ろうとすればするほど呼吸が乱れ、
話せなくなっていた。
再び恵は頭を撫で、落ち着かせた。
“燐なら大丈夫。”
そういう事しか私は言えない。
泣いた分だけ人は強くなれる。私と違って。
今の私は、泣いた分だけ壊れていってる。
あまりにも脆いんだ。
今までそんなことなかった。
優兄と会うまでの5年間、
想い続けることで私は生きてこれた。
でも今は間逆だ。
想えば想った分だけ生きる事が怖い。
「ありがと、レイン。
…もう少しだけ考えるよ。
今日は生徒会行けそうにないや」
「別にいい。スッキリするまで考えればいいよ」