†君、男~Memory.. limit of grief~





「あれ、燐ちゃんまだ来てないの?」


生徒会室に来た万里は
燐がいないことにすぐ気がついた。
朱鷺がいるからなお更。


「…探しに行ってくる」


ぶっきら棒に立ち上がり
生徒会室を出る恵。
重い空気が流れた。



「燐」


「レ…イン…ッ」


人通りがない廊下。そこは屋上に続く道だった。
うずくまって泣いていたのは燐。
恵を見るなり飛び掛る。
反動で後ろに下がった恵は
倒れないように燐を支え、「大丈夫か?」と
一言囁いた。


「逃げてきたの…須藤のとこから。
 最悪だよ、私。何か須藤が他の人と
 話してる姿が嫌で…!
 すぐに涙が溢れてくるッ」


燐の頭を撫で、恵は力を抜いた。


「安心しろ。燐の恋は頑張れば叶うものだ。
 泣いた分だけ好きになってる。
 その気持ち、ちゃんと相手に伝えれば
 すっきりするんじゃないのか?」


「…ッ」


「好きと言う感情でその人を拒む事はある。
 普通に話す事はきっと前より
 難しいと思う。けど、燐は大丈夫だ。
 私なんかよりずっと可能性を持っている。
 少しの努力でそれは変わる」


「      」


何度も何度も鼻を啜る燐。
喋ろうとすればするほど呼吸が乱れ、
話せなくなっていた。
再び恵は頭を撫で、落ち着かせた。



“燐なら大丈夫。”
そういう事しか私は言えない。


泣いた分だけ人は強くなれる。私と違って。


今の私は、泣いた分だけ壊れていってる。
あまりにも脆いんだ。


今までそんなことなかった。
優兄と会うまでの5年間、
想い続けることで私は生きてこれた。
でも今は間逆だ。


想えば想った分だけ生きる事が怖い。



「ありがと、レイン。
 …もう少しだけ考えるよ。
 今日は生徒会行けそうにないや」


「別にいい。スッキリするまで考えればいいよ」


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