†君、男~Memory.. limit of grief~
「結局最後まで残ったの、
私と須藤だけか…」
6時を前にして最後まで
生徒会室にいたのは恵と朱鷺の二人だった。
他の人たちはすでに帰ってしまった。
夕日が生徒会室を明るくする。
「蒼井ってさ、ずっと先生の事
好きだったんだろ?辛くなかった?」
ポツリと朱鷺は尋ねる。
恵は手を休めて窓の方に目をやった。
「辛いなんてものじゃない。
ずっと叶わないと分かってても
見てしまう自分が嫌いだ。
1年後には、また私から離れてくのに…」
「本当の気持ちも伝えないまま?」
「…そういう自分はどうなんだ。
人の心配するより、まずは自分の事
解決した方がいいんじゃないのか?」
恵の鋭い指摘に黙る朱鷺。
ため息をついて恵は一言言った。
「燐なら多分中庭にいる」
「は?」
「もし何かモヤがあるなら、
解決すれば良いだけの事」
恵の言葉は全て心に突き刺さるものだった。
朱鷺は何も言わず席を立って
生徒会室から出て行った。
頑張った分だけ幸せに近づく恋は、
正当だ――――…。