†君、男~Memory.. limit of grief~
トラブル前の前兆
「レイン、こっちお願い!」
高校生活最後の年の中で、
一番最初に来る行事。
水那高校では体育祭だった。
「良かったな、燐。
須藤と付き合えて」
「えっあっ…うん」
観覧席で必死に応援する燐。
その横で恵は足を組んで頬杖をついていた。
照れながら燐は笑みを浮かべていた。
かなり幸せだという事が分かる。
「レイン…?」
「…」
黙ったまま恵は動かない。
ボーっと遠い目をして
競技をしている人たちを眺めていた。
「レ…」
再び名前を呼ぶ前に恵は立ち上がり
燐の言葉を遮る。
一瞬燐の方を見た恵は
少し寂しそうな表情を浮かべ、
何所かへ行ってしまった。
「レイン…」
どうしたの?
どうしてそんな寂しそうな顔したの?
私はちゃんと、レインの傍にいるから…。