†君、男~Memory.. limit of grief~


「確かあれは優介が引っ越す前だな。
 公園に呼び出されて言ったらさ
 歯を噛み締めて泣いてた。
 レインちゃんの事…辛そうに話してた」


「…」


「守ろうって思ってたのに
 裏切ってしまう…ってな」


嘘だ…。そんな事言うなんて――


「俺が優介を店に来ないかって
 誘った時もさ言ってたよ?
 “同じ過ちを繰り返してた。
 なんでいつも俺は守れないんだろう”って」


「…ッ」


恵は手を口に当て、泣いていた。


「俺はあいつの事何もわからねーけど。
 レインちゃんの事は誰よりも
 大切に思ってたと思う」



そんな事あるの…?


貴方も、苦しんでたの?


私は貴方の裏を知らない。
けど、私の知らないとこで
苦しんでたんだ―――…。


「あいつがレインちゃんを突き放したのも
 レインちゃんを想っての事だから…
 分かってあげてほしいんだ」



貴方は何度も私を突き放した。
でもそれは私が優兄に近づけば
家の事を知ってしまうと思ったから。


なら今はどう―――…?



“なぁ…頼むから急に
 俺の前から消えるな”


これが本音なのかな?



耳を澄まして聞こえたら、
信じる気持ちを手にして走れるよね―――…


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