†君、男~Memory.. limit of grief~


「熱冷ましシート買ってきたから、
 これ貼って早く寝る」


いつもより強い口調の恵。
優介はそのまま引っ張られ部屋へと連れて行かれた。
強引にも別途に入れられ、恵は
熱冷ましシートを優介の額に貼る。
優介の体は風邪で火照っていた。


「じゃぁちゃんと寝ててね。
 私は帰るから――…」と言った時だ。
恵は優介に腕を掴まれ動けなくなっていた。
ついさっき聞いたような弱弱しい声で
「ここにいろ」と言う。


「明日テストだってのは分かってるけど、
 …頼む。傍にいてほしい」


「       」


優兄がそんな言葉を口にするなんて…


「わ…かった」


優介の手が離れ、ストンとその場に座る。
恵はそのままずーっと座っていた。



“傍にいてほしい”


私…


“…たった一度だけあいつ、
 泣いてた事があるんだ”


私――…知らないうちに
パズルのピースをはめ込んでいってる。


表のパズルを全て合わせたら、
裏を知る事が出来るから…?





< 348 / 482 >

この作品をシェア

pagetop