†君、男~Memory.. limit of grief~


「ここだ!早く早く」


手招きして朱音は二人を呼ぶ。
朱音の気分は下がることはなかった。
むしろ上がりっぱなしだ。


「緊張するなー。
 だってあの有名な花火だもん。
 メインはやっぱ最後のビック花火だよね!」


ハンフレットを見ながら
満面の笑みの朱音。
隣にいた結菜と恵も
パンフレットを覗き込む。
ふと結菜は呟いた。


「あっそういえばさ、
 今日井上に今度遊ばないかって
 誘われたんだけど朱音達も誘われた」


「え?私等も?
 これはレイン目当てですねー」


「私?」


ポカンとする恵は
まったくの鈍感だ。
呆れた朱音が説明し始める。


「体育祭で告白されたでしょ?
 まだ好きってことじゃない。
 1回ぐらい遊んでみたら?」


「何で私が!」


全否定の恵。
その瞬間、大きく一発目の花火が
打ち上げられた。


「あっ始まったー!
 すごいすごい」


出だしから迫力はすごかった。
花火の音は大きく響き、
全身に伝わってくる。
鳥肌も立つくらいだ。


9時に終わるこの花火大会。
1時間経ったところで休憩が入り、
10分後また連発から始まった。


3人とも無言で見る。
花火に釘付け状態だった。


鳴り止むことのない花火…。
何色と見えるその輝きは
“オーロラ”と言う名にふさわしいものだった。



「いよいよ最後だ。
 HPで見たんだけど、
 かなり凄い物みたい」


「へぇーそれは見逃せないな」


二人が盛り上がってる中、
恵はある一点のものを見て固まっていた。
花火の音とあまりの綺麗さに
二人はその事に気がついていない。



「      」


優兄――――…?



最後の花火が放たれた。
まるで3Dのように目の前にくるようだった。
数え切れないほどの色が
一瞬にしてその場を明るくする。


恵だけは、その花火を
見ることはなかった。



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