†君、男~Memory.. limit of grief~

目の前に映っているものを
信じることが出来なくて、


花火の音でさえ
耳に入ってこなかった。









あの時確かに優兄は
見知らぬ女性と並んでいた。


優兄が花火大会に来ていた驚きと、
“彼女”かもしれない存在がいたことに
私は目を疑った。


けど、それは無い話でもなかった。


優兄はもう25歳。
私とは10歳も離れている。
そう言った人がいてもおかしくないもの…。


それでも心が痛むのは
その光景が辛いから?



「レイン?さっきから俯いてるけど
 本当に大丈夫?」


「ごめん、大丈夫だから。
 朱音…今日はありがと。
 私、先に帰るね」


恵は朱音達と目をあわすことなく
走り去っていってしまった。

< 37 / 482 >

この作品をシェア

pagetop