†君、男~Memory.. limit of grief~
「劇はいい」
冷たく反対された燐。「じゃぁ歌は?」と
恵の顔色を伺いながら訊いた。
しかし返事は返ってこない。
目を瞑ったまま壁にもたれている。
「やろーよ!最後の文化祭だよ?
やっぱ最後も歌で終わりたいじゃん」
必死の説得。恵は目を開き
意外な返事を返した。
「別にいいよ」
「へ?」さすがの燐もポカンとなる。
「何だ?いいって言ってるだろ」
「あっうん!じゃぁまた話し合お」
「うん……。?」
辺りを見回す恵。顔色が変わった。
「どうしたの?」
「今、何か聞こえなかったか?」
「別に…何も聞こえないけどー…」
燐も一緒に見回す。やはり何も聞こえない。
恵の目はどんどん見開いていく。