†君、男~Memory.. limit of grief~


「叶わない恋だと分かっていて、
 自ら追い続けただけでも罪なのに…
 神が与えるチャンスにも私は従わなかった。
 どんな結果が待とうと仕方がないことのはずなのに…
 どうしようもないくらい怖いんです。
 時間が1分…1秒と進んでいくのが」


「怖いと思うのは当然じゃないかな?
 でもまだ完全に終わったわけじゃない。
 少でも時間があるなら、
 最後まで自分の意思貫けばいい」


「…ッ近いから。
 こんなにも傍にいるから余計…辛いんです」


近ければ近いほど、離れる事への恐怖が増す。


だって追いかけられないから…。
離れる事しかないから―――



私に選択肢なんて―――…




「      」


泣いている恵の頭に手を乗せる慎。
何も言わず、微笑んだ。


「どうなるかなんて、最後まで分からない。
 本当の別れが来るまで、悩めばいい。
 最後に出す決断は間違ってないから。
 安心しろ、レインの周りには助けてくれる仲間がいっぱいいるだろ?」


コクンと頷き、大粒の涙を流した。
その時、「レインちゃん?」と言う声が聞こえる。
恵はゆっくりと顔を上げた。


「湊さん…?」


以前ストリートライブで知り合った人だ。


「久しぶり!今帰り?
 あっそちらの方は彼氏さん?」


何やら楽しそうに質問する湊。
「違います」と真剣な表情で恵は答えた。


「何か泣いてるみたいだけど…。
 また歌いにおいでよ。いつでも待ってるから」


「はい。…あの、一つお願いがあるんですが」


「…?」


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