†君、男~Memory.. limit of grief~
「わざわざごめんなさいね」
「いえ…」
恵の部屋の前の廊下から声が聞こえてくる。
恵を迎えに来た実也だ。
ゆっくりと扉を開け、別途へと向う。
恵はぐっすりと眠っていた。
そんな姿を見て、実也は悲しい表情を浮かべる。
「本心では無理だって分かってるくせに」
実也は呟く。恵に向って。
「いつからそんなに
光を求めるようになったんだよ」
“どんな理由であろうと、
私は一度捨てられた”
「今にも壊れそうな…」
“見つけたかったの”
「そんな弱い心で――――…」
“私の存在を認めてくれる人を…”
誰かが私に問いかけてる。
その答え、どんな質問でも同じだわ。
私が求めていたものは“存在”だったの。
捨てられた私は、きっとこれから先も
捨てられると思い、人との関わりをなくしてきた。
でも、本当は私の存在を認めてくれる人を
探したかったの―――…
生きている証を教えてほしかった。
チャンスに背いた私に見せた物は“月”
それが求めているものを教える代わりに受ける代償。
月を見れば…見てしまった私は
確実に光なんてものはない。
当たり前って笑うかな?
自業自得だから仕方ない?
“代償は重いわよ”
分かってる。
また、月を見て泣くんでしょ?
だってもう、砂時計は半分を超してるから。
卒業まで半年もない。
ねぇ…私の起こる事、予想できる?
目を開ければ、また踏み出さなければいけないのね。