†君、男~Memory.. limit of grief~
「レーイン?」
ボーっとしていた恵に燐は
恵の顔の前で手を振っていた。
ハッとなった恵は正気に戻る。
体育座りに座り、両手で顔を覆う。
周りのみんなはそれを見て不信を抱く。
最近の恵は以前にもまして喋らなくなっていたのだ。
しかし決して誰もその事には触れなかった。
そして日は過ぎて行き、文化祭前日に迫る。
予行が行われる時間まで待機場所で休憩する生徒会役員。
その中に恵はいなかった。
優介と予行について打ち合わせをしていたからだ。
「ふぅ…」
文化祭のプリントを何枚も持つ恵。
そのまま待機場所の教室に向った。
「あっ、そう言えばさ、この間めぐちゃんと
コンビニ行った帰りに門のとこで
佐伯先生が女の人と話してたのね。
その人どっかで見たことあるなーって
めぐちゃんと話してたんだ」
待機場所では万里が以前見かけた
女性の話を燐達にしていた。
「すっかり誰か調べるの忘れちゃっててさ、
昨日調べたら…なんとその人
モデルの近藤明美だったの!」
「えっ!?確かパリコレ出たことある人だよね?
前雑誌で見た」
「 」
扉前で立ち止まった恵。
まるで麻痺したかのように動けなくなっていた。