†君、男~Memory.. limit of grief~
◇
「ほんとにこの歌詞でいいのか?」
「…うん」
恵は自分の書いた歌詞を湊に見せていた。
文化祭で歌う曲を一緒に考えていたのだ。
しかし湊は歌詞を見るなり悲しい表情を浮かべた。
恵がその歌詞に込めた想いが
とても伝わってきたからだ。
「泣いてたでしょ?
目、腫れてる」
夜でも分かる、恵の目が腫れている事が。
リハーサルが終わった後、ずっと泣いていたからだ。
もちろんその事に関して燐達は何も知らない。
一言も喋らず終わったのだ。
一人湊のとこに行く恵の目からは
自然と涙が出てきていていた。
そして今に至る。
「自分でもなんで泣いてるか分からない…。
悲しいのかな…」
少しかすれた声。泣いたせいもある。
「大丈夫。ここにいる限り一人じゃない。
…明日の文化祭頑張れよ?」
「…」
もう言葉が出ない。言えないの。
まるで時間と共に私の声を奪っていくかのよう。