†君、男~Memory.. limit of grief~






「ほんとにこの歌詞でいいのか?」


「…うん」





恵は自分の書いた歌詞を湊に見せていた。
文化祭で歌う曲を一緒に考えていたのだ。


しかし湊は歌詞を見るなり悲しい表情を浮かべた。
恵がその歌詞に込めた想いが
とても伝わってきたからだ。


「泣いてたでしょ?
 目、腫れてる」


夜でも分かる、恵の目が腫れている事が。
リハーサルが終わった後、ずっと泣いていたからだ。
もちろんその事に関して燐達は何も知らない。
一言も喋らず終わったのだ。


一人湊のとこに行く恵の目からは
自然と涙が出てきていていた。
そして今に至る。


「自分でもなんで泣いてるか分からない…。
 悲しいのかな…」


少しかすれた声。泣いたせいもある。


「大丈夫。ここにいる限り一人じゃない。
 …明日の文化祭頑張れよ?」


「…」


もう言葉が出ない。言えないの。


まるで時間と共に私の声を奪っていくかのよう。




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