†君、男~Memory.. limit of grief~
◇
「めぐちゃん!どういうこと?
歌詞全然違うかったじゃんか!」
舞台も終わって帰る途中だ。
万里は怒っていた。
しかし恵は「ごめん」の一言だけ。
万里は歯を噛み締める。
「やめて万里!…ッお願い」
「燐ちゃん…?」
止めに入る燐。
恵は立ち止まって振り返る。
しかしすぐに前を向き歩き出した。
「何で庇ったの…?」
燐が止めた事に不信を抱く万里。
納得がいってない顔だった。
「…今のレインは耐えてるの、この状況に…。
自分が負われている“時間”に…。
今はそっとしといてあげて」
頼み込む燐に万里は言葉を詰まらせる。
そっと朱鷺は燐の頭に手を乗せた。
「何か知ってるからそう言うんだろ?」
「…うん」
「なら俺は何も言わない。
あいつの後ろ姿見てれば…どんだけ苦しんでるか分かるしな」
俯いて涙を零す燐。何度も頷いた。
その中で、「ありがとう」と言う言葉が
みんなには聞こえていた…。