†君、男~Memory.. limit of grief~

「…先生と回らなくてもいいの?」


「何で?」


「えっ…だってそれは…そのー」


何で?と訊かれて戸惑う燐。
質問をしたのに返って来た返事がそれでは困る。
結局何も言えず黙る燐に恵は一言言った。


「もう関係ないから」


「えっ、関係ないってどういうこと?」


「…」

返事はない。それどころか恵は前を向いている。
燐はゆっくりと恵が見ている方向を見た。
そこにはこっちに向ってくる優介がいた。


恵の表情は険しくなる。


「悪いが燐、私は一人で回る」


「えっちょっとレイン!?」


燐の言葉など耳に入っていない恵。
反対方向に歩き出した。
人ごみですぐ見失ってしまう。
そんな中、優介は燐に声をかけた。

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