†君、男~Memory.. limit of grief~
「優兄…。
 ホントに優兄なの?」


「当たり前だろ。
 同姓同名の名前なんて
 数しれてるぞ」


出席簿を片手に持ち、
ため息をついて苦笑いする。


もうあれから5年…。
さすがに見た目が少し変わっていた。
もちろん恵の方も変わっている。


少しの記憶を頼りに、
出会ったのかもしれない。


「まさかお前がこの学校
 来るとは思わなかった」


「それはこっちの台詞。
 優兄がこの学校で
 教師してるなんて想像つくわけないでしょ」


「まぁ、これから3年間ヨロシク。
 あーそれと学校内では
 優兄って呼ぶなよ」


「はいはい」


めんどくさそうな返事。
優介は出席簿で軽く
恵の頭をたたいた。


「今度、何かおごってやるよ。
 久しぶりの再開に」


「…」


変わっていない。
刹那にしてそう感じる。


見た目は変わっても、
中身が変わっていないことに
恵は嬉しかった。


10歳離れているのは
さすがに大きく見える。
今では子供と大人の境界線が
ハッキリと見えるようだ。
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