†君、男~Memory.. limit of grief~
「おじゃましまーす!」
7月の終わり、暑さも上がってくる中、
朱音と結菜が初めて
恵の家に遊びに来た。
「すごい綺麗な家だね。
こういうの何ていうんだろ…
南欧風?」
二人はキョロキョロしながら歩く。
恵は最初に連れて行った場所は
絵が飾ってある部屋だった。
天井にはシャンデリアが
部屋中に光を差し込ませ、
床は自分が映るぐらいツルツルしていた。
二人ともポカンと口を空けたまま動かない。
「すごい…絵の為にこんな部屋が…
あっ!これ全部レインが描いたの!?」
朱音は目に入った絵に
飛びつくかのように近づく。
そこの部屋にある絵は
油絵かペンで描いた2種類の絵が飾られており、
朱音が飛びついたのは油絵だった。
「すっご。プロだよプロ!」
「朱音、こっち来て!
この絵、すごいって」
結菜が絶賛したのは
夜の海の上に浮かぶ天使だった。
羽が天使を取り囲むように舞っている。
「本間にすごいよレイン!
文化祭展示したら?
うちの友達美術部いるから
頼んでみようか?」
「いや…別にそこまでしなくても」
「何で?すごい上手いのに。
うちこの絵一番気に入った」
結菜は先ほどの絵を指す。
数分間その場から動かなかった。