†君、男~Memory.. limit of grief~
◇
“さようなら”
そんな言葉、レインの口から聞くことなんて
考えもしなかった…
むしろ、ないと思ってた。
「…」
門を出た恵は夕日を背に歩く。
前方に実也が立っていた。
「実也…」
「優介さんと何かあっただろ。
今にも泣きそうな顔してる」
そう言いきる実也。
恵は近づき、実也にもたれかかる。
胸に顔を埋めた。
地面に、服に涙がにじむ。
恵の体は震えていた。
「私…さよならって、言ったから…ッ
もう――……」
「あぁ…」
壊れてしまう私の心。
失ってしまう私の感情。
この世界が怖い―――…。
貴方がいた幸せ、消えていく。
砂時計のように終わっていくの。