†君、男~Memory.. limit of grief~
―10年前―
「ずっと好きでした!付き合ってください」
高校3年生の10月。
放課後の教室で言った一言が始まりだった。
「別にいいけど」
「――…ホントですか?」
今まで告白を一切断ってきた優介が、
初めてOKを出したのだ。
無論、明美は喜ぶ。
しかし…優介に感情など入っていなかった。
不安な感情を抑えるためだけの
存在にしかすぎなかったのだ…。
クラスの男前1位の優介と、
美女1位の明美が付き合い始めたことは
すぐに知れ渡っていった。
優介の事をずっと好きだった明美にとっては、
付き合うということが夢のようだった。
けれど、それと同時に不安さえ感じられた。
今まで告白を断ってきた優介が、
何故自分と付き合ったのか…。
その不安はどんどん増していった。