†君、男~Memory.. limit of grief~
「佐伯先生…ちょっといいですか?」
11月半ば。文化祭から息苦しい生活を送ってきた燐。
うつろな優介と、茫然の恵。
その間で毎日を過ごしていた燐はついに話を切り出した。
放課後優介を中庭に呼む。
肌寒い風が吹いていた。
「私…もう耐えられません」
ためらいながらも出た言葉。
優介はつらそうに表情を歪めた。
「あいつの言った言葉の意味、分かるだろ?
どうすることも出来ないんだ」
「そんなことない…!
レインは無理に消そうとしてるだけなんです。
本当はそんな気全然ないのに…」
その言葉を言う事すら精一杯だった。
何も出来ない自分を認めたくない、
出来るという確立が1パーセントでもあるのなら…そういう思いだった。
ずっとレインと一緒にいた燐にとって
この状況が誰よりも辛いはず。
そのことは優介も分かっていたことだ。
「俺は何も出来ない」優介は口をはさだ。
「そんなの…やってみないと分かりませんよ」
反論するもののその弱い声には
説得力がなかった。優介は笑う。
「ホント安井はあいつを大切に思ってるんだな」
「私だけじゃありませんよ?
みんなレインのこと大切に思ってます。
…もちろん佐伯先生も」
その場の空気が和らいだ。