†君、男~Memory.. limit of grief~



「佐伯先生…ちょっといいですか?」


11月半ば。文化祭から息苦しい生活を送ってきた燐。
うつろな優介と、茫然の恵。
その間で毎日を過ごしていた燐はついに話を切り出した。


放課後優介を中庭に呼む。
肌寒い風が吹いていた。


「私…もう耐えられません」


ためらいながらも出た言葉。
優介はつらそうに表情を歪めた。


「あいつの言った言葉の意味、分かるだろ?
 どうすることも出来ないんだ」


「そんなことない…!
 レインは無理に消そうとしてるだけなんです。
 本当はそんな気全然ないのに…」


その言葉を言う事すら精一杯だった。
何も出来ない自分を認めたくない、
出来るという確立が1パーセントでもあるのなら…そういう思いだった。


ずっとレインと一緒にいた燐にとって
この状況が誰よりも辛いはず。
そのことは優介も分かっていたことだ。


「俺は何も出来ない」優介は口をはさだ。


「そんなの…やってみないと分かりませんよ」


反論するもののその弱い声には
説得力がなかった。優介は笑う。


「ホント安井はあいつを大切に思ってるんだな」


「私だけじゃありませんよ?
 みんなレインのこと大切に思ってます。
 …もちろん佐伯先生も」


その場の空気が和らいだ。

< 416 / 482 >

この作品をシェア

pagetop