†君、男~Memory.. limit of grief~
「どうしよ…」
恵の家の前のいた燐だが
インターホンを押す事への勇気が出ないまま
立ちすくんでいた。
「何してんの?」
後ろから声をかけられ振り返る。
慌てて自分が誰なのか言う。
「私、恵さんと同じクラスの安井燐です。
会えないでしょうか?」
「あぁ、ちょっと待って今呼んでくるから」
そう言って燐の横を通る。
ふと燐は「あの…」と口にした。
「レインの従兄弟の方ですか?」
「そうだけど、何で知ってんの?」
実也は向きを変える。
燐の表情は緩んだ。
「前にレインから聞いたんです。
従兄弟が家にいるって。
…レイン、大丈夫ですか?
私、心配なんです」
「そっか、君知ってるんだね。
…正直言って元気とは言えない」
「そう、ですか…」
緩んだ表情も浮かなくなる。
「やっぱり呼ばなくていいです」
「失礼しました」一礼して賭けて行く燐。
その後ろ姿が妙に切なく感じた。