†君、男~Memory.. limit of grief~
◇
「あっ、レインちゃん!」
「湊さん…今帰りですか?」
12月上旬。寒さも身にしみてくる時期だ。
いつものように図書室で勉強していた恵。
その帰りに湊とその友達に会った。
「ちょっとライブしてね」
確かに。と恵は頷く。
背中に楽器を背負っていたからだ。
「その子この間一緒に歌った子?」と
仲間の一人が訊く。
湊は答えた。「そうそう」
「じゃー俺等は帰るわ」
「おぅ。またな」
湊以外の人たちは帰っていく。
二人だけになってしまった。
「今日は一人なんだ」
「…大抵一人ですよ。
そう言えば、どうしてバンド名“soul/”なんですか?」
「唐突だなーお前」
ハハハと笑う湊。
「soul/…/(スラッシュ)は文とかを
区切るための線だろ?で、soulは魂。
俺達は“魂を区切る”って事でその名前にしたんだ。
人間を魂に置き換えたんだよ」
「…人間を区切るんですか?」
さっきまで笑っていた湊とは一変して
真剣な表情で恵を見た。