†君、男~Memory.. limit of grief~
「俺は今のこの世界が嫌いだからな…。
 新しい世界になるよう、境界をつけたかったんだ…」


「そんな意味を込めてたんだ…」


しんみりした空気が流れる。
しかしそんな空気を湊はすぐに消した。


「ごめんごめん、暗い話して。
 けど、レインちゃんの声聞いたり、
 自分で考えた歌詞を見せてもらったりした時…
 自分の考えを180度回転させられた気分になったわ」


「私…何もしてません」


俯く恵に湊は温かい笑みを見せた。


「気づかなくていい。
 そのままでいるからレインちゃんは“自分”でいられる」


「     」


目を見開く恵。
まるで世界が全てが視界に入ってくるようだった。


湊は鞄から1枚の紙を出し、それを恵に差し出す。


「それあげる。俺が書いた歌詞。
 音とか全然つけてないから、
 レインちゃんの好きなように歌っていいよ」


両手でその紙を受け取り、
じっと目を凝らしながら見る。
何かに気づいた恵は顔を上げ、湊を見た。


湊は何も言わず微笑んだ。


「…ありがとうございます」



この歌、いつか歌える時が来る時…


今の私はきっと生まれ変わってる。



“さよなら”も言えないこの想い、
私はどうしたらいいの―――…?



いつか、気づかせて…。





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