†君、男~Memory.. limit of grief~


「じゃーそれをそっちに。
 あっそこに置いてるの
 取ってもらってもいいですか?」


着くと同時にテントの
組み立てが始まった。
恵も荷物を運んだりしている。
ただ、優介から離れているのがすぐ分かった。



「なぁレイン、こっち手伝ってくれないか?」


そう優介が呼ぶ。
黙って恵は行き、何も言わず作業を始めた。


「あのさ、レインに一つお願いがあるんだ」


「何?」


「実は、生徒会に
 入ってもらおうか考えてる」


「私が生徒会に?」


作業していた手を止め、
恵は顔色を変えた。


「水那高校の生徒会は
 少し特別なものなんだ。
 先生達が推薦したものしか入れないことになっている。
 自分の持つクラスから相応しい人を
 何人か候補に入れるんだ。
 もちろん候補がいなくてもいい」


「…なんで私なんかが」


「お前を生徒会に入れたいっていう先生は
 結構いるんでね。
 候補では俺のクラスからレイン。
 3組の板谷、8組の須藤。
 6組の安井と宮根の5人だ」


「燐と板谷さんも?」


「知ってるのか?」


うん、と軽く返事をして
何処かへ行こうとする恵。
とっさに優介は止めた。


「入る気ないの?」


「…別に。けど、
 入ろうなんて全く考えてない。
 キャンプが終わるまで
 まだ時間はあるでしょ?
 それまで待って」




そう…燐が生徒会に…


みんな、離れていくのね―――



空も太陽も…みんな
 


「めぐちゃん、どうしたの?」


「あっ…」


顔を覗き込み、
様子を伺うのは優介の母親(美祢)だった。


「いえ、大丈夫です」


「そう?じゃぁご飯作るの
 手伝ってもらってもいいかしら?」


「はい」


恵は美祢に言われたとおり作り始める。
その姿は楽しそうだった。


しかし優介は遠くから
ため息をつきながら見ていた…。




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