†君、男~Memory.. limit of grief~
◇
「レインー!!!」
終業式前日。
教室に入るなり燐は恵に飛びついてきた。泣きながら。
「私…合格したの!」
「ホント?」
何度も頷く燐。再び飛びついた。
燐、万里共に私立大学推薦入試合格だ。
泣き声が教室にわんわんと響いた。
恵は燐の頭を撫でながら「良かったね」と
優しく言う。本当に良かった…。
「次はレインのだね!
頑張ってよ」
放課後の中庭。足をぶらんぶらんさせながら燐は言った。
そうだなー…と恵は浮かない様子。
「?…そういえば今年のクリスマスは
先生と過ごすの?」
「…迷ってる」
「へ?」
恵はベンチから立ち上がり
目を瞑りながら空を見上げた。
「イブの日、去年行ったところに行かないかって
誘われたが…行くの、やめようと思って」
「どうして?」
ゆっくりと目を開ける。しかし完全ではない。
細く、うつろな瞳だ。
「文化祭前、燐が万里達を話してるのを聞いた。
…近藤明美は優兄の高校時代付き合っていたんだ」
「 」
「そして再び再会した…。
そんな中に私は入っていけない。
彼女の方が“叶えられる恋”だから。
…それに今でも優兄を好きだと彼女は言った」
恵は振り返り、燐をじっと見た。
その視線に息を呑む燐。目を逸らせない。
「優兄の事は好きだ…。
けど、それだけじゃ何も出来ない。
私の恋は“叶わない”んじゃない。“叶えられない”んだ。
でも彼女は“叶わない”の方だった。
…燐には分かるか?叶えられない恋より
叶わない恋の方がやり直すチャンスはある、と…」
凍りつくその瞳…見ないで。
言い返せなくなる―――