†君、男~Memory.. limit of grief~






「レインー!!!」


終業式前日。
教室に入るなり燐は恵に飛びついてきた。泣きながら。


「私…合格したの!」


「ホント?」


何度も頷く燐。再び飛びついた。


燐、万里共に私立大学推薦入試合格だ。
泣き声が教室にわんわんと響いた。


恵は燐の頭を撫でながら「良かったね」と
優しく言う。本当に良かった…。


「次はレインのだね!
 頑張ってよ」


放課後の中庭。足をぶらんぶらんさせながら燐は言った。
そうだなー…と恵は浮かない様子。


「?…そういえば今年のクリスマスは
 先生と過ごすの?」


「…迷ってる」


「へ?」


恵はベンチから立ち上がり
目を瞑りながら空を見上げた。


「イブの日、去年行ったところに行かないかって
 誘われたが…行くの、やめようと思って」


「どうして?」


ゆっくりと目を開ける。しかし完全ではない。
細く、うつろな瞳だ。


「文化祭前、燐が万里達を話してるのを聞いた。
 …近藤明美は優兄の高校時代付き合っていたんだ」


「     」


「そして再び再会した…。
 そんな中に私は入っていけない。
 彼女の方が“叶えられる恋”だから。
 …それに今でも優兄を好きだと彼女は言った」


恵は振り返り、燐をじっと見た。
その視線に息を呑む燐。目を逸らせない。


「優兄の事は好きだ…。
 けど、それだけじゃ何も出来ない。
 私の恋は“叶わない”んじゃない。“叶えられない”んだ。
 でも彼女は“叶わない”の方だった。
 …燐には分かるか?叶えられない恋より
 叶わない恋の方がやり直すチャンスはある、と…」
 
 
凍りつくその瞳…見ないで。


言い返せなくなる―――
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