†君、男~Memory.. limit of grief~
悪魔が誘う24-砂時計の怒り-



12月24日。

世間で言うクリスマスイブ。
去年の今頃、恵はきっと幸せに満ちていただろう。
けれど今はその間逆と言ってもいいかもしれない。







「あれ?あいつまだ起きてないんですか?」


「起きてると思うんだけど…
 まだ1度もここにはきてないわ」


午前11時。一度もリビングに顔を出していない恵に
実也は心配していた。


「今日はイブなのによ―…」


そう。今日はイブだ。そして優介と約束がある恵。
そんな事実也が知っているわけなどない。
しかし、恵の様子からして気づいているだろう。


物音一つしない恵の部屋。
何かしているわけでもなく、恵は別途に横になっていた。


「…」


“自分から逃げないでよ!”


何度も燐の言葉が頭の中で繰り返される。


嘘をついてまで逃げたんだ。
行く気にはなれない。



『(午後)7時に中央駅で』


そう優兄は言っていた。
その時刻まで後8時間。


7時を過ぎれば私は今よりも楽になれるだろうか―…


それまで眠っていよう…。
きっと夢を見るから。


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