†君、男~Memory.. limit of grief~
ドンドン!!
誰かが扉を何度も叩く。
そして勢いよく扉が開かれた。風が吹く。
「レイン!」と言う声と共に…。
恵は目を擦りながら起き上がる。
目の前には眉間にしわを寄せた実也と
わなわなと身を震わせている燐がいた。
「何しに来た…」恵は冷たく言い放つ。
「何しに来たじゃないわよ!
もう7時前だよ!?
先生との約束はどうしちゃったの?
何でのうのうと寝てんのよ!」
外はもう暗い。
恵は一瞬窓の方に目をやり、再び前を向いた。
「今更行かないとか言わないでよ。
…無理やりにでも連れて行くから」
余裕さえ感じられない真剣な表情。本気だ。
「行かない事で、自分が解放されるって思うの?」
ドクン…。
脈打つ音が聞こえた。…動揺してるから?
「確かに行かなかったらレインは今の苦しみから
逃れられるかもしれない。
けど…先生は悲しむ事になるよ」
「 」