†君、男~Memory.. limit of grief~


優介に言う隙も与えず恵は後ろを向いた。
「おい!」と言って恵の腕を掴むが、
ことごとく離された。


「私がいるから…優兄や
 明美さんに辛い思いをさせて…
 私、ここにいることが出来ない…!」



最悪のクリスマスイブだ。
何もかも失ってしまった。


私だけか悪人になればいい…
そう思ったのは強がりなのだろうか。


「俺は…レインと行きたいから誘っただけだ。
 あいつは関係ない。
 それに…レインがいなかったら
 俺は今より笑うことはなかった」


「…その言葉だけで十分だから」


「レイン!」


恵は駈けて行く。優介が見えなくなるまで。
どこまでも…走り続けた。




最悪のクリスマスイブ?


ううん、これで良かったの。


「…ッ」




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