†君、男~Memory.. limit of grief~
「お願いだからやめて!!」
その叫びは部屋に反響しただけで
すぐに消え失せた。再び静寂に戻る。
「レイン!」
バン!と言う扉の音と共に実也が入ってくる。
目の前には今にも砕けてしまいそうな恵がいた。
泣き崩れている。実也は言葉を失った。
「時間が…砂時計が迫ってくる…ッ。
私に囁くんだ!『諦めろ』って!
私が月を見たから…チャンスに背いたからよ!」
「レイン、落ち着け!」
実也は恵の肩に手をかけ懇願するかのように
言い放った。
「…っ」
もう限界なのか?
絶える事が出来ないのか?
「もう少し頑張れ。
そうすればきっと…解放される、から」
「 」
言ってはいけないと分かってる。
けど俺にはそう言うしかなかったんだ…。
「大丈夫だから…安心しろ」
実也はそっと恵を抱きしめた。
なかなか震えが治まらないその身体は
恐怖のせい…なんてものじゃない。
“後悔”と言う2文字だ。